SENRYU REVIEW

それいゆるうぺ

「蜂」会員による一句評を掲載しています。毎日更新。

駅に落ちてた寒いメモ帳きっと芸人

酸 第7回現代川柳会

痛い。勝手にメモ帳を落とした人の気持ちになってしまい、痛くてたまらない。笑顔がひきつる。落ちたメモ帳の文字を開いて、寒いなと思い、持ち主は芸人だろうと推測する。そんなお前も大概だぜ、と言いたくはある。

 でも、ちょっと優しい。たとえばこの句を並び替えて、「芸人だろう寒いメモ帳駅に落ちてた」とかすると、どうか。まずもって詩情がなくなった。それでダサいし。けれど作者の句は、冷たいのに温かみがある。冷笑はしていないから。きっと芸人wwなんてポストはしない、明日には忘れる応援もしないけれど。ただメモ帳を拾い、寒かった、芸人だろうと思う。そこには事実と個人的な憶測しかないから、さっぱりしていて切れ味がいい。感情の虚飾も余計な見栄も存在しない。すごい好きなのだ。何かを思ったときいつも、思いすぎてしまうから。

 余計なことを思いすぎている。面白いとか好きとかつまらないとか、それだけでいい。あの人より売れてないのはおかしいとか、もっと評価されてほしいとか、疲れるのは、次々に浮かんでくるのが余分なことばかりだからだ。この人の寒がり方には自分しかいないからシンプルで、それを簡単にやってのけるからムカつくほどに、うらやましくなる。そして、3・4×3!という驚異のリズム感の詩でもある。昔深夜にやっていた、「フリースタイルティーチャー」、芸人さんがラップバトルするあの番組で、このリリックがあったら沸いただろうな。見てみたかった。メモ帳、何て書いてあったのかなあ。

出典:https://note.com/toba_torakitsune/n/nfcf3dc2052f6