銀河から戻る廊下が濡れている
小池正博 編著『はじめまして現代川柳』
無駄のない、武術の達人の身のこなしのように美しい575。それはそれとして、宇宙飛行士がその希有な体験ゆえか「自分は啓示を受けた」と語りだすことは珍しくない。鋭敏になった感覚は地球帰還後の暮らしを一変させ、見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたり、濡れていない廊下が濡れていると感じる。だから、この句は宇宙飛行士にとってただの廊下を書いただけの句、いわゆる「ただごと句」である。むろん宇宙とリビングを結ぶ廊下というただごとならぬ空間でのただごとではあるものの。