この海苔はいつか私の邪魔になる
石田柊馬『LPの森/道化師からの伝言』
「この海苔」。海苔……?という戸惑いがまず起こる。それが、「いつか私の邪魔になる」と告げられる。これは聞き手がいる言葉というよりは、語り手の裡で事柄を確かめるように発せられた言葉と受け取るべきかもしれない。
「海苔」は、食品として加工された海苔と解しても、海で息づいている岩海苔などのことと受け取ってもいいのだと思う。いずれにしても読者のイメージの中に現れるのは、黒だったり緑だったりする、空間を塗りつぶすような色のかたまりだ。
何かが邪魔になること。私たち凡夫は、それが邪魔になったときにはじめて邪魔だと認識する。その点、この語り手は常人離れしている。将来的に邪魔になるものが、べっとりと黒い「海苔」としてあらかじめ〈視えて〉いるかのようなのだ。
『LPの森/道化師からの伝言 石田柊馬作品集』(書肆侃侃房、2025年)収録句。