SENRYU REVIEW

それいゆるうぺ

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初心にも特殊メイクをしておこう

小池正博『海亀のテント』(書肆侃侃房、2022年)

本来の顔立ちを美しく整えるメイクとは異なり、まったく別の姿へと変貌させるのが「特殊メイク」だと思います。

そして、何かを習い始めたばかりの、まだ未熟なときの純粋な気持ちをあらわす「初心」。

特殊メイクを施されると、初心はどう変わるのでしょうか。

メイクが素顔をより魅力的に見せるものだとすれば、特殊メイクはその素顔自体を変えるものです。

特殊メイクを施された初心とは、見た目だけの「変貌」ではなく、内面のあり方自体が「変容」した初心と考えられます。

何かを初め、研鑽し、積み重ねていく中で、世界の見え方そのものが塗り替えられることもあります。

「にも」という重ねられた助詞が効いていて、まだ初心である時点にさえ、その初心を変えようとしているところに、この句の逆説があります。

そう考えると、「しておこう」は呼びかけよりも、自分への戒めとして独りごちている印象が強まります。

特殊メイクはまだ施されておらず、「しておこう」という未来への意志にとどまっています。

だからこそ、純粋な初心を守るのではなく、あえて変容させようとする決意が、かえって鮮やかに浮かび上がるのです。

何度も初心へ立ち返るうちに、本当の初心がどんなものだったのか、わからなくなる。

過去の自分と現在の自分は静かに重なり合い、かつて目指した姿は、最初から自分の中にあったのだと気づくのかもしれません。

一方、ピュアな「初心」さえも演出の対象になってしまうという、どこかアイロニカルな響きもあり、一筋縄では読ませない奥行きも感じられます。

川柳に限らず、何かを積み重ねるという営みそのものへのアフォリズムとしても響きます。

シンプルでありながら、読むたびに新たな表情を見せる、深みのある一句ではないでしょうか。