SENRYU REVIEW

それいゆるうぺ

「蜂」会員による一句評を掲載しています。毎日更新。

紙切れがまぶしく親友しかいない

我妻俊樹 ネットプリント『金星と土星』

 巨大な深海魚からはがれた一枚のうろこのような句だ。美しい。そしておもしろい。

 A3用紙1枚にずらりと六十句がならんだネットプリントに収められた一句だが、まず驚かされるのは六十句が六十句ともおもしろいことで、思わず六十句評を書いてしまいそうにすらなるものの、いやだめだ一句評だよ、と頭を振って我に返ったとたん、またべつの、あることに気づいてやはり驚いてしまう。

 これ、六十句のおもしろさがどれもぴったり同じじゃないか。

 句の出来にムラがない、という言い方では足りない。ほんとうに、まったく同じおもしろさなのだ。これは、たんにおもしろい句が六十句あるのとはわけがちがう。なにしろ、くりかえしになるが、まったく同じだけおもしろい句が六十句ならんでいるのだ。なんなんだこれは。端的に言えば、怖い。それは、ふと気づくとクラスメイト六十人が同じ顔をしていたときの怖さ、あるいは、ふと気づくと大谷翔平が六十打席連続でスリーベースヒットを打ったときの怖さに近い。いわば、なぜこんなことになっているのかわからない、という怖さである。第一、大谷翔平なら全打席ホームランを打てばいいものを、なぜスリーベースヒットなんだ。怖い。わけがわからない。

 しかし、わけがわからない=理解が及ばない、と思考停止してしまうのはあまりにもったいないと思う。作者は天才かもしれない。そう思ったとき、しかしそれと同時に作者は「天然」ではないとも思うべきだ。六十句ともがおもしろい句なのは、たまたまではない。