SENRYU REVIEW

それいゆるうぺ

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秋は奈良仁王つれ出しウンコもさせ

渡辺隆夫『川柳 魚命魚辞』

 これではまるでペットではないか。まず驚いてしまった。身も蓋もない句と言えばそれまでだが、どこか気になる。ここで一旦、句の上中下を三つのシーンとみなして鑑賞してみよう。

 まず、〈秋は奈良〉という場所の提示。助詞「は」は、「春はあけぼの」のように「~といえば」くらいだろうか。紅葉の古都のイメージが漠然と立ち上がる。
 次に、〈仁王つれ出し〉と具体的な事件が起きる。仁王は金剛力士とも言い、東大寺南大門の金剛力士像が有名だろう。仁王は仏法の守護神とされ、南大門がそうであるように寺の門の左右に配置される。その門番とも言える仁王を連れ出す。大事件だ。いったいなにをするのか……。
 〈ウンコもさせ〉、オチである。ここで冒頭の感想に戻る。聖から俗への転落と言ってもよいが、言葉のまま面白がるほうがよいかもしれない。「仁王立ち」という言葉があるが、おそらく仁王も立ってはしないだろう。
 付け加えれば、仁王像は口をあけた「阿形」と口をとじた「吽形」のペアで安置されるものだ。「阿吽の呼吸」の「阿吽」である。ものごとは「阿」からはじまり、「吽」でおわる密教的な考え方だが、この句も〈秋〉の「ア」ではじまり、〈ウンコ〉の「ウン」でおわっている。なるほど意外に深い……かはともかく、仕掛けのユーモアがあることは確かだ。

渡辺隆夫『川柳 魚命魚辞』(邑書林、2011年)