キタムラサプーソ、名探偵さ
雨月茄子春『おともだちパンチ』(私家版 2025)
いつか。いつか、雨月茄子春こと井口寿則氏を研究するかもしれないどこかの誰かのために、筆者はこれについて幾ばくかの説明をする責任が、一応はあるだろう。この句と集中の連作「キタムラサプーソ」は、筆者の「チャリできたグスときたキタムラサプーソ」(2022年2月川柳句会ビー面)を雨月がたいそう気に入ってくれたことをきっかけに生まれたオマージュである。グストキタやキタムラサプーソはタガログ語の口説き文句で、「大好き」とか「愛してる」とかの意味で、筆者の原作発表当初から雨月はそのことをわかったうえで「キタムラサプーソさん」という人としてその勢いや言葉の圧力に惹かれ、自身の作品に取り入れるに至ったようだ。
キタムラサプーソさんによる〈名探偵さ〉という名乗りでもあろうし、親愛の告白後の照れ隠しとしての名探偵とも、とれなくもない。それらを踏まえたとて、だからなんだ、と思わないでもないが、自信があるのやら照れているのやらといった具合で、両方だろうとも思う。
最後に蛇足。同集に筆者と雨月のツイッターのDM画面のイラストが掲げてあるが、実際はもう少し丁寧な文面の依頼だった。もはや雨月アカウントが消えているので確認のしようがない。編集の経験を持っておられるからかイメージ図も示してくれ、すぐに筆者は快諾した。発行後に(買って)手にとってみると、とても可愛らしい表紙と装丁で胸が躍った。だが、例のイラストが依頼時に示されたマジックペンの手書きイメージ図のまま掲載されているのを目にし、その素敵な装丁とのアンバランスさにくらくらした。こんな素晴らしい句集の唯一の汚点に加担してしまったと、しばらく悶々として過ごしていたが、雨月自身も自信も照れもあるしきっと大丈夫かと気を取り直したのが今となっては懐かしい。